天然水を使ったレシピ~スイーツ編~
水を使うのは、おかずメニューやご飯だけではありません。スイーツにも水は使われています。
ただスイーツはどうしても砂糖の味などが表にくるため、あまり「水自体の味」について問われることはないと思われます。
それでもおいしいと言われている水菓子を見ていけば、「スイーツに合ったお水」がわかるかもしれません。スイーツと水の関わりについて考えていきましょう。
大人気のお菓子に見る、水とスイーツの関わり方
お菓子を作るときに、「水」に焦点があてられることは、残念ながらそれほどありません。お菓子の主役となるのは小麦粉や卵、砂糖、バターであるからです。とくに洋菓子はその傾向が強いと言えるでしょう。
ただ洋菓子にも水を使用するものもありますし、和菓子などでは大福を作るときに使ったり餅をこねるときに使ったりもしますので、水と菓子がまったく無関係ではありません。
水とスイーツの関係を知る手がかりとなるのは、「信玄餅」なのではないでしょうか。
「甲州台ヶ原金精軒」という名前の和菓子屋さんの名前を聞いたことのある人もいるかもしれません。山梨県、甲斐駒ヶ岳の尾白川に育まれた街並みのなかに存在するお店です。
まんじゅうやどらやき、かすてらに信玄餅などを扱うこのお店は、114年もの歴史があります。
このお店のなかでとくに特徴的なのは、「水信玄餅」でしょう。
毎年ごく限られた期間(3カ月~4カ月程度)の土日にのみ販売されるお菓子であり、奇跡的なまでにおいしく美しい外見から各種のメディアにも頻繁に取り上げられています。店側が「日持ちや運搬などを一切考えないで作っている」というお菓子であり、買ってからわずか30分ほどで形が保(たも)てなくなります。また予約もできません。このように非常に限定的なお菓子でありながら、爆発的な人気を博しています。
この「水信玄餅」は、南アルプスの天然水をわずかな寒天で作っています。南アルプスの天然水は、日本でもっとも消費されているミネラルウォーターと言われており、非常に人気が高い水です。
もっともこの南アルプスの水は、「ミネラルウォーター」とは言われているものの、非常にやわらかい水であり、分類的には「軟水」に分類されています。その軟水のなかでもかなりやわらかい水であり、水道水の半分程度の硬さしか持ちません。水のもつさっぱりとしたさわやかさと柔らかな食感を「スイーツ」として成り立たせるためには、南アルプスの天然水のもつこのような特徴が必要なのかもしれません。
この「信玄餅」は家で作ることもできます。
やり方は意外と簡単で、水にアガー(海藻やマメからとれる成分で作られる。凝固剤の一種)を入れて溶かして固めるだけ。砂糖を入れてもよいですし、「甘みは後から黒蜜でつける」などの方法をとってもよいものです。さすがにお店のものと同じ、とまでは言いませんが、お店で使われている軟水である「南アルプスのお水」を使えば、再現度はアップするでしょう。
お菓子とパン、使われる水の違いについて
信玄餅は軟水を使って作られることも多いようですが、お菓子と関係の深い「パン」の場合は少し異なります。たとえばパンドミ。
パンドミなどのパンの場合、あえて硬水を使うことでもっちり感を出している、というお店もあります。またパン作りについては「硬度の高いものは向かないし、分類としては『軟水』に分類されるが、日本の水道水よりも硬度が高い100ミリグラム/リットルのものを使うとよい」としている専門家もいます。これは「中硬水」と呼ばれる硬さです。
ホームベーカリーに強力粉と薄力粉、マーガリンに塩や砂糖、そして水を入れて作られるものであり、朝ごはんのパンなどに最適です。中にホウレンソウやニンジンを混ぜ入れてもよいですね。
水の手に入れ方について
甲州台ヶ原金精軒のような匠(たくみ)の技はもちろんありませんが、家で信玄餅を作ろうと思うのであれば、南アルプスの天然水で作ってみるとよいでしょう。上でも述べたように、南アルプスの天然水は非常によく飲まれている水であり、入手方法にも事欠きません。ウォーターサーバーでも普通のスーパーでも簡単に手に入れられます。
ただ難しいのが「硬度100の水を手に入れる方法」です。
日本の水は軟水に分類されており、水道水が60程度の硬さです。またウォーターサーバーで取り扱われている水についてもそのほとんどすべてが100以下となっています。かつては「Mizの樹」というウォーターサーバーのメーカーが硬度100の水を打ち出していたようですが、2013年に自己破産申請を行い、倒産してしまいました。そのためウォーターサーバーで硬度が100のものを探すのは極めて難しいでしょう。
しかしだからといって、市販のミネラルウォーターを買おうと思うとこれも難しいと言えます。市販されている海外産のミネラルウォーターは硬度が200以上あるものが多く、今度は逆に硬度が高くなりすぎてしまいます。
近しい硬度のものとしては、「DUSKIN」の「秩父の水(硬度88)」でしょうか。
また「水のクリタのうまい水」では、硬度100の同名の水をお届けしています。「どうしても一番いい条件でパンをこねたい」のであれば、これらのサービスを利用しましょう。
おわりに
来年こそは絶対に水信玄餅を食べる!と心に誓いました。水をそのまま閉じ込めたかのような外見は本当に美しく、写真を見ているだけでもうきうきしてしまいます。
軟水は飲みやすさが魅力ですが、中硬水~硬水を手に入れようとするとなかなか難しそうですね。「ちょうどよい硬さ」というのがなかなか見つけられないようです。選択肢は限られますが、パン作りが楽しみの人は入手してみてください。