アトピーやぜん息などアレルギー体質の改善に ウォーターローディング【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.7】
免疫力が低下しますと、がんばかりでなく、アレルギー性疾患まで引き起こすことがわかっています。アレルギー性疾患とは、スギ花粉症をはじめとする、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支ぜん息、食物アレルギーなどの総称です。
アレルギーのメカニズムは次の通りです。アレルギーを引き起こす物質が体内に入ってくると、免疫細胞が動きだし、人体の粘膜や皮膚に炎症を起こします。
鼻の粘膜で炎症を起こすとアレルギー性鼻炎になり、気管支の粘膜で起こると気管支ぜん息に、皮膚で起こればアトピー性皮膚炎です。これらの病気は、全く別のように見えますが、発症の根っこにあるものは同じです。免疫力の低下があるのです。
よく「アレルギー性疾患は、免疫が過剰に働いている状態」という説明がなされますが、この病気が起こるのは、免疫が強いからではありません。免疫機能が弱体化しているために、免疫細胞が本来の働きを見失い、体にとって敵ではない物質にまで無駄に攻撃を繰り返してしまっているのです。
殺菌作用の高い薬剤はでは免疫機能が強まらない
免疫機能の弱体化を起こす原因は、研究者によってさまざまに言われていますが、私は「日本人の清潔好き」が一番にあると考えています。
免疫機能は細菌などの外敵が入ってくると稼働力を高め、免疫細胞が連携してこれをたたきます。ところが、「風邪をひくのがいやだから」と、風邪をひく前から殺菌作用の高い薬剤などを使って細菌の侵入をシャットアウトしていると、免疫機能は強化するチャンスを失います弱体化した免疫機能は迷走し、本来は敵ではない物質にまで攻撃を繰り返してしまうのです。
「風邪をよくひく子ほど、大人になって丈夫になる」とは、よく言われることです。子供のころに免疫を強化しておけば、大人になっても病気をしなくなる、ということです。
免疫を強化し、アレルギー体質を改善するには、水の飲み方を変えることが有効です。体質の改善のためのウォーターローディング法というのがあります。
ウォーターローディング法とは
ウォーターローディング法は、もともとプロスポーツ選手がよく行っている水飲み健康法です。持久力を高め、成績の向上を目的に開発されました。
ウォーターローディング法とは、エビアンのような高度300位の「中硬水」を試合前一定期間1・5ℓから2ℓ飲み続けます。マラソンや柔道、テニスなど体力を使う競技では、活動が激しく、体内のカルシウムが減少してしまいます。
そうすると副甲状腺ホルモンがSOS信号を出します。その結果、骨などから多量のカルシウムが溶出し、血管壁に付着します。つまり、前にも述べました通り「カルシウムが減るとカルシウムが血中に増える」、いわゆる「カルシウム・パラドックス説」なのです。
運動選手にとって、「動脈硬化」は致命的です。動脈を硬化させないためには、カルシウム含有量の多い「中硬水」を飲み続けることが有効です。
コントレックスのように硬度1000㎎/ℓ以上の超硬水と言われる水もあります。当然、中硬水よりカルシウムの濃度は濃いのですが、この種の水を飲み続けても運動能力の向上にはなりません。なぜなら、カルシウムやマグネシウムの濃度が高すぎると、利尿効果が働き、結果的に脱水症状を起こすからです。
普段からカルシウムを中等度含んでいる水をこまめに飲んでおくと、血管が軟らかくなり、柔軟になります。血管の弾力性が高まれば、血流がよくなり、新陳代謝も活発になって、免疫力も増強されます。こうしたメリットは、スポーツ選手が運動能力を高めるために強い武器となっているのです。
アレルギー改善のための水
私は、この方法をアレルギー体質の改善のために応用しています。
飲む水は、ミネラルを適度に含む中硬水を選びます。軟水では、免疫力の増強を期待できるほどのミネラルは含まれていませんし、超硬水では利尿作用が働きすぎます。硬度100~300㎎/ℓ程度の中硬水がお勧めです。
中硬水を1日に飲む総量は、大人の場合は1ないし、1・5ℓでよいでしょう。子供の場合は、500ml~1ℓくらいまでにしておきましょう。ミネラル含有量の多い水は、消化吸収に負担がかかるため、消化器官の未熟なうちは飲みすぎないことも大事です。
もっとも注意すべき点は、アルカリ性であることです。PH7.5以上の水が良いでしょう。飲むタイミングは、昼間が良いと思います。
のどに渇きを感じる前にこまめに飲むようにします。飲み方は「チビリチビリ」を基本とします。目安は、1回にコップ半杯から一杯で、上限は250ml程度です。内臓に負担をかけず、良質の水を体にゆっくりと浸透させながら体質を改善していくには、小分けにして飲む方法が最適なのです。
先日、私はアトピー性皮膚炎で悩んでいる5歳の女の子の相談を受けました。全身に赤い湿疹があり、かゆくて苦しそうでした。既往歴に腎炎があり、腎機能も少し低下していました。この子の場合は、硬度の高い水を使った体質の改善は使えません。
そこで私は軟水のなかで、抗酸化作用のある水を探しました。島根県浜田市金城町から湧き出る水、「金城の華・純天然のアルカリイオン水」は硬度40㎎/ℓの軟水で、PH8.2のアルカリ水です。
炭酸水素イオンが多量に含まれている水で、抗酸化力が期待できます。この水を私はアトピー性皮膚炎で悩んでいる5歳の女の子に飲んでもらいました。最初の三カ月では症状に変化がありませんでしたが、六カ月で少し改善のきざしが見え、1年でほぼ完治しました。
軟水でもアルカリ性で、抗酸化力のある水を飲み続けることで体質を改善はできることを実感したのです。
藤田先生のウォーターレシピ
アレルギー体質の改善に効果のある水:アルカリ性の中硬水
【飲み方】
量:大人1~1.5ℓ・子供500ml~1ℓ
飲み方:のどが渇く前に少量ずつ飲む
藤田 紘一郎
東京医科歯科大学名誉教授
著者紹介
藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。
1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。
主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。
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