炭酸水には疲労物質を取り除き、血流をよくする効果がある【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.8】
1日の仕事を終えた後のビールは格別な味がします。プシューと栓を開け、グラスに注ぎ、白い泡を感じながらのどを潤した瞬間、「この一口のために、今日も頑張ったのだな」などと思うものです。
私は糖質制限食を初めて長くなりますが、仕事終わりのビール一杯だけは、自分へのご褒美として「よし」としています。ビールが心身ともにオンとオフを切り替えるスイッチになってくれるからです。
「癒やしのビール」その理由は?
実は、この「癒やしのビール」ですが、ビールでなくても良いのです。心身をいやす働きをしているのは、ビールに含まれる炭酸だからです。
炭酸には、即効的に疲労を回復させる効果があります。体を動かすと、筋肉内では脂肪と酸素が燃焼します。そうすると、その燃えカスとして乳酸という疲労物質が発生します。この疲労物質がたまると体が酸性に傾いてしまい、筋肉の活動を邪魔します。これによって、疲労感が生じてくるのです。
炭酸水に含まれる、シュワシュワと発泡するもととなるのは、重炭酸イオンです。重炭酸イオンには、疲労物質を中和する働きがあります。乳酸は中和されると、最終的に二酸化炭素と水になり、呼吸や尿とともに排出されるのです。
また、重炭酸イオンが体内で水と二酸化炭素に変化すると、血液中の二酸化炭素量が増えてくる一方で、酸素が不足してきます。その結果、血管に酸素を多く送り込もうと体が働き、血行が良くなります。
炭酸を含む飲み物をとると、スカッとした爽快感を味わえるのは、こうした働きが体内にて即効的に起こるからなのです。
ただし、ジュースなどの炭酸飲料は、私はお勧めしません。糖質の含有量が多いため体に与える害が大きいからです。ビールは私も大好きですが、糖質を多く含むというリスクをわかったうえで、お楽しみ程度に飲むようにしています。
ビール、ジュースはカロリーオフのタイプも販売されていますが、カロリーをオフにしながら甘みやうまみを出すには、それ相応の操作があります。人工甘味料を使う場合もあります。
即効的に効くのは炭酸水
即効的に疲れをいやすために、もっともよいのは炭酸水です。特に天然の炭酸水は、人工的に加えられたものが「ゼロ」ですので、安心して飲むことができます。
が初めて飲んだ炭酸水は、フランスの「ペリエ」でした。南米のアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスを訪れたとき、フランス料理とともに出されたのがペリエでした。初めて口にした印象は「苦くてとても飲めない」というものでした。そして、すぐに普通の水と交換してもらった覚えがあります。
しかし、今では炭酸水が大好きです。仕事中に疲れたなと感じたら、コップ一杯の炭酸水を飲んで、サッと疲れをとるようにしています。乳酸などの疲労物質は、体にため込まない方が良いからです。
今、日本でもさまざまな炭酸水を飲めるようになっています。東京のウォーターバーで若い女性にもっとも人気のある水は「ペリエ」だとも聞いています。
また、世界一高級なミネラルウォーターと呼ばれている天然水も炭酸水です。この炭酸水は「シャテルドン」という名です。フランス産の「シャテルドン」は、「太陽王」と呼ばれたルイ14世も魅惑し、ヴェルサイユ宮殿の宴と食卓を飾ったことでも有名です。
高値の理由の一つは、その飲み口の良さにあるのでしょう。繊細な泡は、ミネラルウォーターのドンペリとの名を持つほどです。また、年間約100万リットルと採水量が限られているため、希少価値を得ていることも、高値の理由です。
最近、スーパーやコンビニなどでよく見かける炭酸水は、「ゲロルシュタイナー」です。この炭酸水は、ドイツ産です。大きな気泡と、強めの炭酸が特徴で、飲んだ時に満足感が得られます。硬度1310㎎/ℓの超硬水ですが、スッキリとした飲み口で、硬水特有のクセの少ない水なのです。
炭酸水の効果
また、炭酸水は、冷え症にも効果があります。飲むと血流が良くなるからです。そして、肩こりの症状改善にも効果が期待できます。
肩こりは血流の悪化が原因で、炭酸水は、それを改善するからです。コリのある部分には乳酸が蓄積しています。肩こりを感じたら、サッと炭酸水を飲んで乳酸を取り除くと、だんだんコリを感じなくなります。
ただし、炭酸水を飲むときには注意が一つだけあります。炭酸水の多くは弱酸性のため大量に飲んでしまうと体を酸性に傾かせてしまいます。体が酸性に傾くと、新陳代謝が滞り、かえって、疲労感を招くことにもなってきます。
炭酸水は、疲れを感じたらパッと飲み、ダラダラと飲み続けないことです。
たとえば、デスクワークの人ならば、仕事中は自分の体調に適したアルカリ性の水を一口ずつ飲んでおき、休憩時間にコップ一杯の炭酸水をゴクゴク飲み干すようなイメージで活用すると良いでしょう。
ただ、疲労が蓄積し、疲れがなかなか消えない「慢性疲労」の状態にまで陥ってしまうと、炭酸水だけでは疲れは抜けません。こうなった時には、デトックス効果の高いサルフェート入りの水を飲んで、細胞レベルから改善を図る必要があります。
現代社会はますます複雑になり、この社会で働く人間は、とにかく疲労が積み重なりがちです。そんな時、炭酸水を飲むことによって疲労物質を除き、心身をいやすことが必要でしょう。
藤田先生のウォーターレシピ
藤田 紘一郎
東京医科歯科大学名誉教授
著者紹介
藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。
1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。
主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。
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