硬度の高い水は心筋梗塞や脳梗塞を予防する
「良い水を求める世界の旅」と名付けていろいろな国の飲料水を調査したことを前に述べました。ヒマラヤの高原地域に暮らすフンザ族や南米の奥深い高原地域に住むビルカバンバの人たちは長寿で有名でした。彼らが飲んでいる水は「カルシウムを多く含み、弱アルカリ性の水」でした。
なぜ、カルシウムを多く含む弱アルカリ性の水を飲んでいると、長生きできるのでしょうか。
カルシウムを含んだ水で心筋梗塞・脳梗塞の予防を
カルシウムは一般に、骨や歯を形成するミネラルであることが知られています。体内のカルシウムのうち、1%は筋肉、神経や体液に存在します。この1%のカルシウムは、人間の生命活動を営むうえで最も重要な役割を果たしています。
その働きとは、血液の凝固を助け、筋肉の収縮を促し、酸素を活性化させ、心臓が正常に働くように支えるなど、実にさまざまなものです。つまり、カルシウムがなければ私たちの体が機能しなくなるのです。
このようにカルシウムは生命維持に欠かせないものであるため、カルシウム量は体内で厳密に管理され、量が減ると体は血液中のカルシウム量を一定に保とうとして、副甲状腺ホルモンを分泌します。
この副甲状腺ホルモンは、カルシウムの補給を促すSOS信号なのです。ひとたび、SOS信号が出されると、骨などに含まれるカルシウムが血液中に溶け出し、カルシウムの不足が補われます。しかし、このSOS信号は、一度発せられると、すぐには止まらないのです。
必要以上のカルシウムが骨などから血液中に放出されて、それが血管壁に付着します。その結果、血管壁の弾力性が失われ、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞になりやすくなるということです。
つまり、「カルシウムが不足するとカルシウムが過剰になる」ということで、カルシウム・パラドックス説として知られています。実際に「カルシウムを多く含む水を飲んでいると心筋梗塞や脳梗塞になりにくい」という疫学的研究があります。
反対に、体をつくり、健康を保つ水を毎日飲んでいれば、心身の健康を増進させることがわかっています。体をつくる水を飲むことで予防できる病気は、脳梗塞や心筋梗塞、がん、糖尿病、肥満などの生活習慣病から、うつ病など心の病気に至るまで、たくさんあります。体をつくる水には、日々、体内で生じている細胞の損傷を防ぎ、血管を丈夫にし、生命活動を円滑にする作用があるからです。
カルシウムを多く含む水を飲んでいると、動脈硬化が予防され、心筋梗塞や脳梗塞になりにくいので、その結果、このような水を飲んでいると長生きする、ということです。
硬度の高い水で若々しい体を築く
水に含まれているカルシウムとマグネシウムの総和を「硬度」として表します。硬度の高い水を飲んでいると長生きできるということです。
「硬度の高い水」は、このほかいろいろ体に良いことをしています。カルシウムには腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発化する働きがあります。腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、腸の動きが良くなると、体調がすべてよくなります。また、マグネシウムには大便を軟らかくする作用があります。排便力が高まり、やはり腸の動きがよくなります。
腸の働きが良くなると、免疫機能も活性化します。その結果、病気をしにくい、若々しい体が築かれていくことになります。さらにビタミンやドーパミン、セロトニンなどの幸せ物質の合成も盛んになり、心身ともに健やかになっていくのです。
藤田先生のウォーターレシピ
期待される効果⇒心筋梗塞、脳梗塞の予防
【水】
硬度の高い水
【飲み方】
寝ている間体内に水分が少なくなるため、心筋梗塞の発作は午前中が多い。
また、入浴中にも水分を失うため、
就寝前、起床直後、入浴前にコップ一杯の水をのむことが大切です。
藤田 紘一郎
東京医科歯科大学名誉教授
著者紹介
藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。
1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。
主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。
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