天然水を飲み、体を潤し、風邪をひきにくい体にしよう【藤田紘一郎先生の水で健やかVOL.27】
インフルエンザなど、人に感染して風邪症状を引き起こす病原菌は、気温20度、湿度65%の環境では活動力を弱めることが知られています。高温、高湿度のもとでは死んでしまうのに、低温、低湿度のもとでは長時間生き残り、空気中を浮遊し続けるのが風邪ウイルスの特徴です。冬に風邪が流行しやすいのはこのためで、冬になると「加湿に気をつけるように」という決まり文句を毎日聞くことになります。
空気よりも体内の加湿を心がけて
「手洗い・うがい・加湿」は、風邪予防の三原則のように語られています。もちろん、敵を自陣営に入れない作戦は大事です。しかし、それがかえって自分の体を弱めてしまうケースもあるのです。
冬になれば、自宅内での加湿にいくら気を配ったところで、外出先で風邪ウイルスがまん延している危険性は否めません。人が大勢集まる場所ほど、その危険性は高まるでしょう。
風邪ウイルスに対する最大の防衛は、自分の体の免疫力を高めておくことです。そのためには、「栄養・休養・睡眠」とよく言われます。しかし、それに加えて大事なことがあります。自分の体を水で潤しておくことです。
私は、外環境の加湿以上に、自分の体内の加湿こそ大事だと考えています。私たちの体は、約60%が水分でできていることは以前お話ししました。体重600㎏の人なら、体内の水分は約36㎏にもなります。
そのうち、毎日約2・5ℓもの水分が汗や尿、呼吸などによって排出されています。この入れ替え作業を毎日していることを単純に計算すると、約15日間で体内の水分がすべて入れ替わることになります。
では、この入れ替え作業に滞りが生じたらどうなるのでしょうか。
体内から水分が2ポイント減ると、のどに渇きを感じます。のどが渇くというのは、水分がたりていないと訴える体内からのSOSだと考えています。ウイルスなどの病原菌が入り込みやすい状況に体があることを示している、危険信号だと考えて良いでしょう。
水はのどに渇きを感じる前に、チビリチビリと飲むことが大事です。体に水が満ちていれば、たとえウイルスが侵入してきたとしても、体内で生き延びられないからです。しかし、この体からのSOSを放置してしまうと、どうなるでしょうか。
体から3%の水分が減ると、のどの渇きはもはや感じなくなります。血液はドロドロになりはじめ、腸の働きも悪くなります。すると、免疫力の低下が起こります。風邪などの感染症にかかりやすく、治りにくい体内環境になってしまうのです。
さらに6%の水分が減れば、脱水症状が起こります。命に危険がある状態です。風邪を予防するには、のどが渇く前に水を飲む習慣を持つことが第一です。加湿やマスクの着用などはその次にするべきことです。良質の天然水を日常的に飲むことこそ、風邪の予防には大事なことだったのです。
なお、風邪をひいたときには、アルカリ性の軟水を常温で飲むようにします。夜間、たんがからみ、せきが止まらないときには、寝る前に天然の軟水をたっぷり飲んでおきましょう。水をのむとたんが切れやすくなるからです。下痢や嘔吐(おうと)が続くときには、体液の電解質濃度に近いスポーツドリンクなどを一口ずつゆっくり飲むようにしましょう。
清潔至上主義が招いた弊害
風邪の予防の一つに手洗いがありますが、風邪の予防で手を洗う場合は薬用せっけんを使わないことをおすすめします。その理由を少し説明いたします。
現在、日本人の免疫力が総じて落ちています。冬になると毎年、インフルエンザが大はやりし、ノロウイルスやロタウイルスなどによる胃腸炎がまん延します。教育現場でも大変な問題が起こってきています。
一昔前は、インフルエンザによる学級閉鎖になるクラスは珍しい方だったのに、いまでは学級閉鎖にならないクラスの方が珍しくなっていると聞きます。
ウイルスは変異を繰り返すことは知られています。それによって一昔前よりも、ウイルスの毒性が強くなっているのでしょうか。いいえ、そうではないでしょう。私たち日本人の免疫力が弱くなっているのです。例えば、ノロウイルスやロタウイルスなどは、昔からいた病原菌です。
一昔ならば、「おなかの風邪をひいちゃったのね」と大した問題にもならなかったのに、現在では大はやりしやすくなっています。このことは、日本人の免疫力が総じて落ちていることを如実に物語っているでしょう。
なぜ、こんなことが起こってきているのでしょうか。私は、原因の大半は日本人の清潔至上主義にあると考えています。抗菌・除菌・殺菌のための薬剤を身の回りにふりかけ、菌を排除している生活をしているから、免疫力が育たないのです。
免疫力とは、体が病原菌と戦う力を表しています。菌が体内に適度に侵入してくる生活を普段からしていれば、免疫力の弱体化は起こらないのです。
風邪予防のために、うがいと手洗いは必要です。しかし、殺菌作用のあるうがい薬や薬用せっけんは使わないことです。水でしっかり洗えば、それで十分です。のどの粘膜には風邪のウイルスなどの侵入を防ぐ菌が私たちを守るために存在しています。
皮膚には同じように病原菌などの侵入を防ぐ、皮膚常在菌がすみついています。私たちの体に存在する守り神のような菌までも薬用せっけんやうがい薬は殺してしまうのです。
常在菌を殺さないために、うまく常在菌と共生するために薬用せっけん、うがい薬は使わずに水だけでしっかりうがい、手洗いをするように心がけてください。そして、抗菌・除菌・殺菌効果のある、薬剤の乱用はやめることです。
私たちの体を構成する細胞は、脳細胞も含め、1万年前から変わっていないことがわかっています。1万年前と言えば、日本の歴史からみると、縄文時代に当たります。
自然界の一員としてつつましく生きていた祖先が飲んでいた水と同等のものを補給することが、細胞の活性化にもっとも有効に働くのです。つまり、自然の水、殺菌などの人の手を加えていない、天然水が免疫力を弱めている日本人には1番の飲み水と言えるのです。
藤田先生のウォーターレシピ
【水】風邪予防:水アルカリ性の天然水
【飲み方】のどが渇く前にチビリチビリ飲む。
藤田 紘一郎
東京医科歯科大学名誉教授
著者紹介
藤田紘一郎 (ふじたこういちろう)1939年、旧満州生まれ、東京医科歯科大学卒。東京大学医学部系大学院修了、医学博士。
金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。
1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を授与。
2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉章を受賞。
主な近著に、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)『脳はバカ、腸はかしこい』(35館)、
『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。
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