奇跡の水?世界の名水特集~トラコテの水~
世の中には、「奇跡の水」と呼ばれるものがたくさんあります。その真偽のほどについては。正直疑わしいものも多いのですが、注目されている分野であることは確かです。
今回はそのなかから、メキシコシティーにある「トラコテ」について取り上げていきましょう。
トラコテとはどんなところなのか、そこにある水にはどんな特徴があるのかを追っていきます。
トラコテはメキシコにある村
トラコテは、メキシコにある村です。メキシコシティーからはるか300キロメートル、北に向かったところにあると言われています。
この村は非常に小さなところであり、決して大規模な村ではありません。
しかしこの村には、毎日何千人もの人が訪れています。その理由となるのが、トラコテにある「水」です。
「トラコテの水」は、実はそれほど歴史が古いものではありません。トラコテの水が取り上げられたのは1986年のことであり、わずか30年程度しか歴史がないのです。ルルドの泉などに比べると、だいぶ新しい「奇跡の水」だと言えるでしょう。
このトラコテの水に着目した最初の人は、1人の牧場主であったと言われています。彼の名前は「ヘイス・チャヒン」といい、腰痛に悩まされている人でした。しかし自分の持っている土地から掘り出された井戸水を飲んでみると、その腰痛の症状がおさまったと言われています。また彼の飼っているペットの傷も癒えたことで、彼はこの水に心を引かれるようになります。
しかしこのチャヒン氏は、これでお金を稼ごうと思うことはありませんでした。まったくの無償でこの水を提供しはじめます。そのようなこともあってか、この「トラコテの水」を求めて集まった人の数は、累計で800万人にもなったと言われています。また病を患った著名人たちが、このトラコテの水にわずかの望みをかけてこの血を訪れたことでも着目されました。
現在は系統だって水の提供が行われるようになりました。医師の監修のもと、それぞれにあったアドバイスも行われているということです。
このようにして取り上げられるようになった「トラコテの水」ですが、その医学的・科学的根拠にはどのようなものがあるのでしょうか。
推測されている「推論」と、はっきりとわかっている「事実」について
トラコテの水の効果や効能を見極めるとき、トラコテの水をとりまく「推論」と「事実」をはっきりと分けて考えなければなりません。
一説によれば、トラコテの水には、がんやアレルギー、糖尿病などの重大な病を治す効果があると言われています。このため病を患っている人もここを訪れるわけです。
ここで視点を変えて、トラコテの水に認められている「事実」について見ていきましょう。
トラコテの水は、アメリカの研究所でその成分が分析されています。その結果としてわかったことは、「トラコテの水は、通常の水に比べて、ミネラル含有量が多い」ことです。
また日本の研究者もこのトラコテの水を研究しています。その研究結果では、「トラコテの水には、活性水素の存在が確認できる」ことがわかりました。このふたつは「事実」なのです。
ただしこの「事実」と「推測」を並べて考えたとき、「事実」と「推測」は必ずしもイコールで結ばれるわけではないことがわかります。
たしかにミネラル分は人間にとって非常に重要なものですし、ミネラルがなければ人は健康を維持できません。ミネラル分を適切にとることによって、がんの発生を抑制することもできると言われています。
しかしながら「ミネラルをとることで、がんが治る」「ミネラルをとれば、エイズなども完璧に治癒する」とは言えません。また水素水と呼ばれるものの科学的根拠・医学的根拠に対しては、現在懐疑的な見方が圧倒的に優勢であることもたしかです。
このふたつをあわせて考えると、「トラコテの水はたしかに体に良さそうではあるが、薬に代わる効能があるかというとそうではない」ことがわかります。トラコテの水に限ったことではありませんが、水はたしかに重要なものですが、それに対して過度な期待を抱いたり、「水があるから大丈夫」として一般的な治療を断ったりすることは、あまりよい判断とは言えないでしょう。
おわりに
メキシコにある小さな村「トラコテ」。そこでとれる水がこのように注目されるようになったことは、トラコテの水を発見した牧場主ですら考えていなかったことなのかもしれません。
現在は多くの著名人にも愛されるようになり、多くの人の来訪があるようになったトラコテの村。そこの水はミネラル分を含んでいるためたしかに体によさそうではありますが、これだけを過信するのは少し怖そうな感じですね。
ただ現在も研究が進んでいるので、しばらくすれば、さらに有用なデータも出てくるかもしれません。