「名水百選」について
〔昭和60年3月28日 環境庁水質保全局水質規制課〕
1.目的
水は生命の源であり、私たち人間はもとより、地球上の生きものにとって欠くことのできない大切なものである。私たちの身のまわりを見わたしても、飲み水、炊事、洗濯等の毎日の暮らしに直接必要であるばかりでなく、農業、水産業、工業などの産業活動を支える重要な資源となっている。
近年産業の高度化や生活様式の向上等に伴い水利用も複雑化し、水の価値の多様化が進んできている。昨今の水質汚濁の状況に対し、元の清流を取り戻そうとする地域住民の運動や、きれいな水を大事に護ろうとする活動などが各地で積極的に実施されるなど、水に関する国民の関心が高まってきているが、これも「よりきれいな水」、「自然のままの水」を希求する国民の気持の現れと考えられる。
全国各地に「名水」等として、古くから引き継がれているもの等も多く、これらの水については、今後ともその保全に努めていくことが重要である。このため「名水百選」調査においては、全国に多くの形態で存在する清澄な水について、その再発見に努め、広く国民にそれらを紹介し、啓蒙普及を図るとともに、このことを通じ国民の水質保全への認識を深め、併せて優良な水環境を積極的に保護すること等今後の水質保全行政の進展に資することを目的とする。
2.調査選定方法
(1)「名水」の調査は、各都道府県に依頼して実施し、昭和59年9月までに各都道府県から環境庁に対し、候補地の報告があった。
なお、調査対象は次のものとした。
[1] きれいな水で、古くから生活形態、水利用等において水質保全のための社会的配慮が払われているもの。
[2] 湧水等で、ある程度の水量を有する良質なものであり、地方公共団体等においてその保全に力を入れているもの。
[3] いわゆる「名水」として故事来歴を有するもの。
[4] その他特に自然性が豊かであるが、希少性、特異性等を有するなど優良な水環境として後世に残したいもの。
(2)選定に当たっては都道府県の報告の中から水質保全局内に学識経験者より成る「名水百選調査検討会」を設け、判定条件等の検討を行い、その結果を踏まえて水質保全局において、百選の選定を行った。
(3)選定の対象は、湧水(井戸を含む。)及び河川等とした。なお、滝については、滝そのものとしては対象とせず、湧水又は河川と一体のものとしてとらえることとした。
(4)選定のための判定条件は次のとおりとした。
[1] 水質・水量、周辺環境(景観)、親水性の観点からみて、保全状況が良好なこと。
[2] 地域住民等による保全活動があること。
を必須条件とし、このほか
[3] 規模
[4] 故事来歴
[5] 希少性、特異性、著名度等
を勘案することとした。
なお河川(用水を含む)等については、対象水域の水質が良好であり、水に係る特別な行事等を有するなどの特徴があり、水質保全活動が特に優れていることとした。
3.選定結果
都道府県からの報告事例数は、784件であった。この中から、大規模な湧水を中心として中間発表において31件を選定した。その後河川等も対象として69件を選定し、全体として100件を選定した。選定された事例の概要は別添のとおり(略)である。
4.その他
環境庁としては、これらの事例を広く国民に紹介し、水質保全意識の高揚を図っていきたいと考えている。
「名水百選」を契機として関係者において今後とも一層の水環境の保全のための活動が推進されることを期待している。またその活動が点から面へ大きく広がり、国民の間に「きれいな水を大事に護る」という意識と活動が深く根づくことになれば幸いである。
名水百選調査検討会名簿(昭和60年選定当時) | |
氏名 | 職名 |
---|---|
伊藤 和明 | NHK解説委員 |
宇野 佐 | (財)国民休暇村協会常務理事 |
榧根 勇 | 筑波大学教授 地球科学系 |
※ 合田 健 | 国立公害研究所水質土壌環境部長 |
高橋 裕 | 東京大学教授 工学部土木工学科 |
富山 和子 | 評論家 |
西川 治 | 東京大学教授 教養学部教養学科 |
森下 郁子 | (社)淡水生物研究所所長 |
八木 正一 | 岡山大学教授 農業生物研究所 |
※ 座長 |
-引用-
- 名水百選について - 水環境総合情報サイト 環境省