3000m級の北アルプス山脈が連なる富山県は、湧水の豊富な地域であるため「水の王国」と呼ばれています。中でも黒部川扇状地湧水は、おいしく良質な湧水として、産業や地域住民の生活を支えています。
ここでは、この黒部川扇状地湧水の成分やアクセス情報などについて紹介していきます。
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どこで採水されている?
富山県の立山連峰に積雪した雪は、夏でも解けることのない万年雪となります。その万年雪から解けた水は、天然フィルターとなる扇状地を通り、黒部の平野地帯へ安定した水量で流れていきます。その水の水温は1年を通して15度前後であり、古くから観光客や旅人などの渇いた喉を潤してきました。
黒部市内には約750ヶ所以上の湧水井戸があり、なかでも黒部川扇状地の生地(いくじ)は、水質・水量ともに上質な地域として「昭和の名水百選」「平成の名水百選」にも選定されています。そんな湧水の町、生地には20ヶ所の湧水名所があり、それぞれ違った味と水質を楽しむことができると、観光客のお立ち寄りスポットにもなっています。
黒部川扇状地湧水群が採水できる「清水(しょうず)の里」へは、最寄駅であるJR北陸本線生地駅から車で約5分です。高速道路を利用する場合、北陸自動車道の黒部IC、または朝日ICから車で約20分走れば辿り着くことができます。
名水の由来
日本屈指の急流河川である黒部川の地形は、度重なる浸食によって、大量の土砂が下流へと運ばれていきました。流れた土砂が四方へと広がり、扇子を開いたような地形であることから、この名水の名称に「扇状」という文字が付けられるようになりました。また、北陸地方では湧水を清水(しょうず)と言い、岩の間から湧き出た水という意味があります。
ミネラル含有量と味わい
天然のフィルターとなる黒部川扇状地の地質は、水に溶けにくい花こう岩からできています。そのため、カルシウムと鉄が少なく、ほどよい甘みとまろやかな口当たりが特徴の水となっています。
硬度は55mg/Lであり、軟水にあたります。ミネラル含有量が低くクセがないため、日本人にとっては親しみやすい味わいです。また、お茶やお味噌汁、だし汁などに使用すると香りが引き立つと言われており、煮物や素材の味をいかす和食料理に適しているとされています。
採水地周辺の観光地
黒部川扇状地湧水により群生した「杉沢の沢スギ」は、国指定天然記念物です。湧水の地表が浅いため、水が砂を舞い上げる光景を間近でみることができる場所でもあります。さらに、湧水によってできた川や池、コケの生い茂る木々は幻想的な雰囲気を作り出し、人気の散策路となっています。
名峰剣岳の麓に位置する上市町には「穴の谷の霊水」という、古くから修行僧の霊場として信仰を集めている場所があります。地元では「あなんたん」と呼ばれており、水汲み場として利用されています。また、あなんたんの霊水は、腐りにくく不思議な効能があることでも知られており、健康祈願、病気治癒などに効果があると言われています。
採水地付近にある黒部市宇奈月町のうなづき友学館は、黒部市の歴史、伝統、産業に関する資料館です。黒部川にかかる日本三大名橋のひとつである「愛本刎橋」の、1/2縮尺復元も展示されています。
黒部川扇状地湧水群の口コミ
黒部川扇状地の湧水 pic.twitter.com/MAzJUR9wjy
— えねいち @トランク長野 (@nh787) August 29, 2015
かなりの湧水量があり、汲みに来る方もたくさんいます。
前名寺清水
生地(いくじ)は富山県黒部市にある「水」の恵みが豊かな海辺のまち。ここ生地では黒部川扇状地からの湧水を「清水(しょうず)」と呼び、町中いたるところで湧き出しています。
最も古いとされているのが『前名寺』庭先の清水です。 pic.twitter.com/X5PWe6Y1wD— VISIT – 観光販売システムズ (@VISIT_KHS) October 14, 2014
水量が豊富なため、住民の敷地内にも湧水が湧いているそうです。
遠いのでなかなか行けないけど好きな風景地。入善町にある杉沢の沢スギ。湧水によってできた原生林。真夏でも涼しかったです。 pic.twitter.com/zW07PC22Aa
— inoue1024 (@inoue1024) August 18, 2016
杉林では、めずらしい形の杉が見られます。
黒部川扇状地湧水群の風景
綺麗な水と静かな場所で、別世界のような空間を楽しめます。
冷たくて気持ちの良い湧水を眺めながらの森林浴もおすすめです。
自然が豊富で、マイナスイオンがたっぷり。空気も美味しいです。
アクセスマップ
どこで購入できる?
黒部川扇状地湧水は食品に使用されるケースが多く、飲用水としての店頭販売はほとんどされていません。通信販売では「天然水」として、500mLペットボトル24本入りのものが販売されています。
また、黒部市生地に点在する共同洗い場や名所にペットボトルや水筒を持参すれば、湧水を汲むことができます。ただし、許可が必要となる採水場もあるため、事前に確認しておきましょう。
おわりに
共同洗い場は生活用水として使われるだけでなく、地域住民の方のコミュニケーション場としての役目も担っています。このように黒部川扇状地湧水は、現在でも人々の生活支え、暮らしを豊かにする大切な自然資源となっています。
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